こんにちは、日下部です。 今回は「婚約破棄」について解説します。
結婚する約束をしていたのに結婚式の前に別れてしまった、という話をよく聞きます。長い結婚生活を考えれば、婚約を破棄することは悪いことばかりではありません。問題と向き合わずに見ないふりをして結婚に進むよりは、立ち止まって良かった、と後になって思えるからです。
とはいえ、婚約を解消するとなると、結婚の準備に費やした金額の負担や慰謝料などの問題が生じます。ところが、法律上には婚約破棄に伴う問題に直接対応する規定がありません。ではいったい、どのように問題にアプローチできるのか、見ていきましょう。
▼目次
離婚との違い
類推適用とは
結婚の準備に掛かった費用
慰謝料は基本的に個別判断
納得のいく解決を目指して
■離婚との違い
婚約破棄と離婚は、単に決別するタイミングが違うだけでなく、適用できる法律の違いがあります。離婚の場合ですと財産分与(※1)や慰謝料、離婚後の扶養に関する法律上の規定がありますが、婚約破棄にはそうした法律がありません。
法律がないからといって、婚約破棄に伴う問題を闇雲に解決しようとすると問題がこじれてしまいます。なぜなら、婚約し結婚するということは、互いの親族を含めて新しい関係を築くことだからです。結婚の準備を進める過程において、婚約破棄の原因や責任が二人だけの問題ではなくなっていくのです。
(※1)財産分与:婚姻中に二人で築いた財産(負債も含む)を公平に分配すること
■類推適用とは
適用できる法律がない場合、どのように解決を図るのでしょうか。ここで登場するのが「類推適用」です。類推適用とは、類似した問題に対応する法律があれば、その考え方を当てはめていく方法のことです。
できるだけ既存の法律の考え方を当てはめることで公平な解決を目指そう、という考えから類推適用は生まれました。
婚約破棄には離婚の規定を当てはめます。例えば、準備に掛かった費用には、財産分与の考え方を当てはめることで平等に分担します。他には、婚約破棄の原因を作った側が相手に対して慰謝料を払うといった方法が一般化しています。 それぞれ詳しく解説しましょう。
■結婚の準備に掛かった費用
結婚式の費用や新婚生活のために使ったお金は、お互いのために支出した共益費用とみなされます。共益費用は公平に折半するのが普通です。
結婚式の費用には、式場や貸衣装、引出物のキャンセル代のほか、婚約指輪や結婚指輪を買うために費やしたお金が含まれます。
婚約指輪も結婚指輪も共に、転売するのは難しいでしょう。業者に引き取ってもらっても高額の買取は望めないので、基本は全額折半することになります。
新婚生活の費用には、新居の仲介手数料や購入費の他、家具や家電の購入費が含まれます。持ち家を購入した場合は、早期に売却してローンとの差額を折半する必要があります。不動産登記にかかった費用、火災保険料なども折半することになります。
■慰謝料は基本的に個別判断
慰謝料については、裁判事例に統一的な基準があるとは言えず、個別に判断することになります。判断の根拠になるのは、受けた精神的苦痛の大きさです。婚約を解消した時期や原因、お互いに相手のことが嫌いになったのか、などを考慮しながら慰謝料を決めていきます。
相手に一方的な原因がある場合、慰謝料に加えて、結婚の準備に掛かった費用を全て相手が負担することもあり得ます。これにはDVや詐欺、家柄や出身などの属性を理由に無理やり解消させられた、といったケースが考えられます。
「慰謝料の額は結納金の倍」という話を耳にしますが、これは妥当ではありません。おそらく不動産取引の考え方に引きずられたものでしょうけど、結婚は一生のパートナーを選択する重要な行為。そもそも、解消することを予定していません。
損得ではなく気持ちが重要ですから、不動産とは明らかに違います。損得勘定をして取引を止めることが想定されている手付倍返しの考え方を当てはめるべきではないでしょう。
■納得のいく解決を目指して
最近では、同性婚も一般的になってきました。法律上の婚姻でなくても、その解消に伴う問題については、上記のような類推適用を使うことができます。法律上に規定がなくても、実情に応じた解決方法があるのです。
困ったことがあれば、納得のいく解決方法を一緒に探していきましょう。
日下部法律事務所には、実績のある専門家が在籍しています。それでは、これからも、Good Lifeを!