最高裁で勝訴


~最高裁判所での勝訴判決~

当事務所の弁護士日下部和弘が代理人になり、最高裁判所に上告をした事件が平成27年11月19日、上告認容判決を受け勝訴しました(判例集等には同日に言い渡された同種事案の別判決が掲載されています)。最新の民法の教科書にも債権総論のところで取り上げられています。

 

1.最高裁判決

 

(1)法令違反,判例違反の場合のみ上告が認められ,事実認定については,1審,2審までで終了します。

(2)2審(高等裁判所)はベテラン裁判官3名による合議なので,間違いは考えにくい。従来議論されていない問題については,判断が分かれ,最高裁判所で判断を統一することがあります。

 

2.事案の概要

 

1)X信用保証協会が,A主債務者がB銀行から借り入れる際に,Aのために保証人となった。

2)主債務者代表者の親族Yは,Bとの間で,連帯保証契約を締結した。

3)主債務者が返済できなくなり,保証協会が代わりにBへ支払った(代位弁済)。

4)その後に主債務者が破産し,Xは,Aに対する求償金債権を破産手続で届け出た。

5)破産事件は,9年近くかかって終結し,Aの代表者も保証人だったが,免責決定。

6)Xは,破産手続終結後10年弱経過した後に,Yなどの連帯保証人に対し求償権を行使した。

7)連帯保証人Yによる時効援用が認められるか。

 

3.争点

 

(1)主債務の時効中断の効力は,民法457条1項により,Yの保証債務にも及ぶか

(2)共同保証人間の求償権の消滅時効が成立したか否か(これが中心的な争点)。

(3)高裁は,保証人が取得した担保権の行使は,共同保証人求償権の行使と実質的には異ならないとし,民法457条1項を類推適用した。

 

4.争点に対するY側の主張

 

(1)主債務者の担保権を取得する制度は,主債務者求償権を確保することを趣旨としたものであり,主債務者求償権に対して附従的な権利である(最判昭和59年5月29日 最判昭和61年2月20日)。

(2)ところで,ア主債務者に対する求償権と,イ他の共同保証人に対する求償権とは,主債務と保証債務との主従関係(附従性)とは異なる。共同保証人間の求償権は,共同保証人間の公平の観点から,民法465条によって創設されたもの,主債務者に対する求償権との間に主従の関係はない。主債務について生じた時効中断は,共同保証人間の求償権の時効を中断しない。

むしろ,主従というなら,保証人への求償権が主であり,原債権及びその担保権は,求償権を確保するために存在する(最判昭和61年2月20日は,共同保証人間の求償権が消滅したときは,原債権及びその担保権も消滅し,その行使は求償権の存する限度に限られ,求償権と独立しては行使できない,とする)。

(3)別の高等裁判所では,(2)と同様の認定がされて,信用保証協会が取得する求償権は,商法522条により5年で消滅時効にかかるとされている。

 

5.最高裁判所の判断

 

(1)代位弁済をした共同保証人は,求償権ではなく,原債権の担保としての保証債権を得るに過ぎない(この点は,昭和59年の最高裁判決)から,求償権と元々の保証債権とは違う。

(2)代位弁済をした保証人は,共同保証人間の求償権の範囲でのみ,他の共同保証人に対し保証債権を行使することができる。

(3)主たる債務者に対する求償権の中断事由がある場合(破産手続き中は時効は進行しない)であっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じない。