証拠が必要な理由

こんにちは、日下部です。今日は「証拠が必要な理由」について、解説します。

 法律に従って解決したい問題が発生したとき、皆さんは、どうされますか?おそらく多くの方は弁護士に相談されると思います。

 

相談の際に弁護士から聞かれるのが、証拠の有無です。ある問題やその問題の元になる事実を確認するためには、証拠が必要なのですね。では、証拠があるのとないのとでは、裁判の勝敗はどのように変わってくるのでしょうか。具体例を交えて見ていきましょう。

 

裁判は原告(訴える側)と被告(訴えられる側)がお互いの主張を展開し、法律に基づいて判決を下す場です。どのような法律が適用されるのかは、法律を行使できる条件が満たされているかによって判断されます。このとき必要になるのが証拠です。証拠は一つで十分なときもあれば、複数必要な場合もあります。

 

裁判官は原告と被告の言い分を聞き、証拠を調べ、事実確認をします。事実があると判断すれば、どちらか一方の当事者の権利が認められますが、事実がない場合は権利も義務も生じません。

 

事実を立証する責任は通常、権利を主張する側(請求する側)が負うことになります。もちろん例外もありますが。事実を立証するためには、証拠を出す必要があります。証拠がなければ事実を立証できませんので、裁判で不利な立場に立たされてしまいます。

 

 貸したお金が返ってこないトラブルを考えてみましょう。お金を返してもらうためには、そのお金を返済してもらう約束をしたことが最低限必要な条件になります。

 

借りた事実を相手が認めればいいのですが、「お金は受け取っていない」とか「あげると言われた」と主張してくるかもしれません。こうなると、どちらの主張が正しいのか証明しなければならなくなります。

 

この場合、貸した事実を証明する責任は貸した方にあります。証拠があれば相手が何と言おうと貸した事実が認められ、返してもらう権利が生じます(相手には返済する義務が生じます)。

 

しかし、証拠がなければ権利は認められません。貸した側の人間が、事実を立証できなければ敗訴するリスクを負っているのです。これを専門用語で、証明責任といいます。

 

繰り返しになりますが、権利を主張する側が証拠を揃えられなければ敗訴するのです。証拠が必要な理由がお分かりいただけたのではないでしょうか。

借用書があれば証拠として使えます。いつ誰が誰に対していくらの金額を渡したのか、返済期限はいつで利息はいくらといった内容が、借用書には書かれているからです。

 

しかし、借用書がないと証明するのは難しくなります。お金を相手に渡したことを銀行口座の履歴などを元に証明しなければいけません。加えて、手紙やメール・SNSなど使って返済の約束をしたことも証明する必要があります。都合よく全ての証拠が残っているとは限りません。

 

 余談ですが、吉本新喜劇を見ていると、借金取りがなけなしのお金を返済する人に、借用書を渡す場面がよく出てきます。これは、最も重要な証拠を相手に渡すことで『これ以上は取り立てないよ』という気持ちを表していると見てよいでしょう。

閑話休題。よくあるトラブルをもう一つ見てみましょう。

不倫が原因で離婚する際に慰謝料を請求する場面です。当てはまる法律が適用される条件に、次の3つが挙げられます。

 

①故意または過失の有無

②不貞行為(配偶者以外の人との性行為)の有無

③それが原因で精神的な苦痛を癒すための慰謝料が発生したこと

 

このうち問題になるのは②であり、①③はさほど証拠に困りません。不貞行為があった事実を証明する証拠があるかどうかが、重要になるのです。

 

浮気をしているんじゃないかと配偶者に問い詰めたところ、「証拠はあるのか」と開き直られた場合を想像してみてください。身に覚えがないなら「浮気はしてない」と否定するはずなのに、「証拠はあるのか」ときた。これはもう、浮気を認めたと思われても仕方ないでしょう。

 

ただ、このような場合であっても、慰謝料を請求する側が具体的な不貞行為の内容を証明できる証拠(※)をそろえなければ、裁判で不貞行為があったことを証明できません。「証拠があるのか」と開き直ったからといって、浮気していたことにはならないのです。

 

 トラブルに巻き込まれたとき、どのような証拠を集めて裁判で戦うべきかについては、法律に関する専門的な知識が必要です。相談したいことがございましたらお気軽にご連絡ください。

 

それでは、これからも、Good Lifeを! 

 

 

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